わさラボ

注目の
キーワード

わさびの基礎知識

 古くから私たち日本人の食卓で親しまれてきた「本わさび」。“植物”として専門的な見方をすると、アブラナ科Eutrema属に分類され、学名を「Wasabia japonica Matsumura」と言います。学名に日本を意味する「japonica」がつけられているように、本わさびは日本原産の植物と言われています。研究の進化によって植物の分類や原産地の推定が変わることがありますが、最新の葉緑体ゲノム解析でも、「Wasabia japonica」は日本固有種であることを裏付ける結果が出ています。
 本わさびはなかなか奥が深く、まだあまり知られていない知識がたくさん詰まっていそうですね。このコラムでは、そんな「本わさびの知られざる秘密」をお届けしていきます。



わさびの基礎知識

第二回 薬としてのわさびの歴史と、 注目の健康成分「ワサビスルフィニル® 」

 本わさびは古くから“和漢薬”として、人々の健康によりそってきました。ここでも、「本わさび」と「西洋わさび」がそれぞれどのように使われてきたのかを見てみましょう。

 「本わさび」を和漢薬として使用する部分は、根茎と葉です。根茎は「山葵根(さんきこん)」、葉は「山愈菜(さんゆな)」と呼ばれています。内服薬としては、食欲増進や防腐抗菌作用があることから、胃薬として重宝されてきました。また、搾汁は魚の毒消しにも使用されていたとされています。ただし、刺激が強いため胃炎や胃潰瘍の人は使用しないほうがいいとも言われていました。
 また、リューマチや神経痛の外用薬としても。すりおろしたものを布に薄くのばし幹部に貼り、10分程ではがします。これは反射的に痛みを軽くする効果があったとされています。植物の特性を生かした、先人の知恵が伺い知れます。

 「西洋わさび」は、ヨーロッパで中世期ごろから薬用として使われてきました。内服薬としては、すりおろした西洋わさびをハチミツと合わせて飲むと、咳や喘息に効果があり、去痰薬として息苦しさが解消されるとされ、気管支炎、肋膜炎、肺炎などにも用いられていました。また利尿作用もあり、水腫、痛風、尿路結石などにも有効とされていました。
 外用薬としても活用されていました。根をすりおろしたものにコーンスターチを加え、ガーゼにつけて患部に貼ると、炎症を起こしている部分に血液が送り込まれ、症状が軽くなる、というものでした。ただし、刺激が強くて、皮膚に水泡ができてしまうこともあったようです。

 国や地域は異なりますが、「本わさび」も「西洋わさび」も同じような療法で使われていたことは興味深いですね。そして近年では、この“わさび”の生理機能を科学的に解明・証明し、機能性を引き出す研究が盛んに行われました。新しい“わさびのチカラ”が次々と発見されています。

本わさびの中に秘められていた「ワサビスルフィニル® 」という大きなチカラ

 本わさびの長年の研究の中で見つけられたのが、「6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)」という健康成分。本わさびに含まれる芥子油の一種です。この6-MSITCは本わさびの中に微量しか含まれていないため、濃縮・精製して手軽に利用できる形にしたものが「ワサビスルフィニル® 」という健康素材です。
 本わさびは辛味が強いので一度にたくさんの量を食べることができません。そこで、本わさびから辛味を取り除き、効率よく「ワサビスルフィニル® 」を抽出する製法の研究が進められ、抽出方法が確立されました。

 「ワサビスルフィニル® 」には、解毒作用、抗酸化作用、血流改善作用など多くの健康機能性が確認されています。中でも肝臓の解毒代謝酵素のひとつであるGST(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ)を活性化させる働きが、野菜の中でもトップクラスに強いことがわかりました。解毒代謝酵素は発がん物質などの異物を無毒化し、体外へ排出しやすい形に変換する酵素です。この酵素を活性化させることが、発がんの予防につながると言われています。さらに、最新の研究では、6-MSITCが脳のダメージを抑制することで認知機能を改善する効果が確認されました。2020年にワサビスルフィニル® を配合した商品が「注意力や判断力」を向上させる機能性表示食品として消費者庁に受理され、その利用が広がっています。

わさラボは
知ってるようで知らないわさびのフシギをお届けする
わさびに特化したWebメディアです