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本わさびの産地開拓

世界に広まる日本食ブームで本わさびの需要が高まる一方で、国内での生産量は徐々に減少している。 その背景には農家の後継者不足や高齢化、地球温暖化の影響など様々な要因が複合的に絡み合っている。 和食文化の広がりとともに、世界的に加工わさびの消費は伸びる傾向にある一方、 原料不足は深刻で加工わさびメーカー各社は海外原料に頼らざるを得ない状況が続いている。 そうした中、これまで本わさびが栽培されていなかった地域での本わさび栽培の可能性が模索されている。



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本わさびの栽培について

本わさびは冷涼で清らかな湧き水のある土地や、手入れの行き届いた山間部の杉林などで栽培される。栽培に適した気温は8〜18度で、暑さにも弱く非常にデリケートな農作物である。その栽培に適した地として知られているのが、長野県安曇野市や静岡県の伊豆地方である。このような地域では清流にさらしながら栽培する「沢わさび」が有名で、根茎が太く育つので、高級品として扱われることが多い。一方で、畑でも栽培が可能な「畑わさび」も加工用として使用されることが多い。どちらも品種は同じである。

沢わさび栽培の様子

畑わさび栽培の様子

本わさびを取り巻く環境

近年、国内での本わさびの生産量は減少の一途を辿っている。特に沢わさびは2006年から2021年の間に6割近くも生産量が減っている。(出典:農林水産省特用林産物生産統計調査)この原因としてはわさび農家の高齢化や後継者不足に加え、かつての主要産地であった地域が地球温暖化などの環境問題により、栽培環境が整わなくなってしまって点などが考えられる。国内での生産量が減少傾向にある中で、特に海外での本わさびへの需要は非常に伸びている。海外での日本食ブームによりわさび自体の需要は伸びており、それを満たすべく国内での栽培量を増加させる新たな動きが業界では起きている。

本わさびの新たな産地を求めて

実は「東北地方の裏山」が今、わさびの新たな産地として注目されている。東北は夏でも比較的涼しく、開けた土地の近くに山林が多いことから、畑わさびの栽培に適した地域であるという。需要が伸びている本わさびの供給ラインを確保するための産地確保として、このあたりのエリアの活用は期待できる。さらに農家にとっても本わさびの栽培はメリットが多い。まず、イノシシやシカなどの害獣に悩まされるリスクが少ない。本わさび特有の辛味のため、食害されることが少ないのだ。また、わさびそのものの重量が他の農作物よりも比較的軽いため、収穫の際の負担も少ない。さらに、田植えから収穫までのサイクルが他の農作物と被らないため、農家の参入のハードルも低めである。このような点から、東北地域の裏山をはじめとするエリアでは今後も本わさびの産地開拓が期待される。このような取り組みが、国内の本わさび生産量の減少に歯止めをかけるためのカギとなり得るかもしれない。

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