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わさびの基礎知識

 古くから私たち日本人の食卓で親しまれてきた「本わさび」。“植物”として専門的な見方をすると、アブラナ科Eutrema属に分類され、学名を「Wasabia japonica Matsumura」と言います。学名に日本を意味する「japonica」がつけられているように、本わさびは日本原産の植物と言われています。研究の進化によって植物の分類や原産地の推定が変わることがありますが、最新の葉緑体ゲノム解析でも、「Wasabia japonica」は日本固有種であることを裏付ける結果が出ています。 本わさびはなかなか奥が深く、まだあまり知られていない知識がたくさん詰まっていそうですね。このコラムでは、そんな「本わさびの知られざる秘密」をお届けしていきます。



わさびの基礎知識

第九回 わさびのチカラ〜予防医学の視点から〜

 

これまで、本わさびには、さまざまなチカラがあることをご紹介してきました。それは、はるか昔より先人の知恵として使われ、受け継がれてきたことがほとんどでした。しかし、現代になり、より深くより広く「本わさびのチカラ」が研究されるようになってきました。現在、かかってから治すのではなく、かかる前に予防する「予防医学」の考え方が広まっていますが、その一端を本わさびが担える時代がくるかもしれません。

わさびに秘められた“健康増進”のための効果

発がん予防

ラットを用いた化学発がん実験で、西洋わさびの成分であるフェネチル芥子油とベンジル芥子油に大腸がんに抑制効果があることが報告されています。一般に、がんは多段階の過程を経て発生すると考えられており、発がん予防物質も、発がん物質の代謝活性化の阻害、解毒代謝への亢進、がん遺伝子の活性化の抑制、前がん病変からの顕性がんへの進展の抑止など、様々な段階における作用が考えられます。

抗腫瘍作用

ヘキサラファン(6-MSITC)には、発がん予防作用とは別に、抗腫瘍作用があることが明らかになっています。様々な腫瘍細胞と手法を用いて、さらなる研究が進められています。腫瘍細胞を接種する2週間前からヘキサラファンを投与しておくことで、転移抑制効果が高くなることも確認されました。ヘキサラファンは、ブロッコリーに含まれるスルフォラファンよりもヒト急性リンパ性白血病細胞を死滅させる活性が高く、白血病治療薬として有望だとしています。

▶︎「ヘキサラファン」とは?

本わさびの主な健康成分「6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-MSITC)」で、芥子油の一種です。

抗酸化作用

活性酸素は、微生物に対する防御など生体内で重要な役割を担っていますが、一方、過剰な活性酸素は生体を傷つけ、老化の促進や炎症、生活習慣病の原因になるとも言われています。このようなことから、活性酸素を抑制する食品成分が求められてきています。ヘキサラファンは過剰な活性酸素を抑制し、身体の老化や炎症を抑制する作用が期待できると考えられています。

抗ピロリ菌作用

ピロリ菌は活性酸素を産生することにより胃壁に損傷を与えることがわかっていますが、 ヘキサラファンがピロリ菌の活性酸素種の産生を抑制することが明らかになっています。本わさびに含まれる抗ピロリ菌作用は、ヘキサラファンおよび芥子油以外の何らかの成分が関与していると考えます。

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